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家づくりコラム

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2021.12.29

2030年を考えた、ハウスメーカー性能を上回る北九州の工務店が考える日本の家づくり

2030年を考えた、ハウスメーカー性能を上回る北九州の工務店が考える日本の家づくりについて、私の見解についてご説明させていただきます。
価格と性能を両方まじめに考える北九州の工務店、ハゼモト建設の櫨本です。

このテーマの根底にある大きな流れを一言で表現すると、「動き始めた脱炭素政策」となります。地球温暖化、CO2削減、異常気象などのキーワードは誰もがいつも聞いているフレーズになりました。この大きな流れは、様々な分野のビジネスに影響をし、SDGsなどのカタチを使って、企業活動だけでなく、私たちの暮らしの中にも大きく関わり合いを持ってきました。
日本も国際社会の一員として、積極的な取り組みへと大きく舵をシフトさせてきました。

①2021年の日本の家づくり基準について

 ・日本は省エネ住宅後進国

ドイツの環境NGOジャーマン・ウオッチ(GermanWatch)は世界各国の地球温暖化対策を比較したClimate Change Performance Index(CCPI)2021年版を発表されました。対象の57カ国(+EU)の全体パフォーマンス評価では、最高スコアはスウェーデン、最低は米国。日本は全体の45位で前年の最下位「落第グループ」から、ようやく脱出した状況ですが、素直に喜んではいられない状況なのです。総合スコア自体は前年と同じで、実は他の国がランクダウンしたので相対的な順位がアップしたに過ぎません。

各分野ごとの評価をみても、エネルギー利用(省エネ)では、25位とまずまずの地位にあるのですが、温室効果ガスの排出量40位、再生可能エネルギー46位、気候政策50位と、大きく低迷しています。気候政策は依然「落第」グループの水準です。

・2020年の省エネ性能義務化を「省エネ性能説明義務化」に

散々議論を尽くしたのに、実施前には骨抜き状態になった感がある、「省エネ性能説明義務化」は実は「省エネ性能義務化」として2021年4月からスタートする予定でした。なぜ、それが実施されなかったのか?ここに住宅業界の闇があるのです。政治力には業界が団体としてその交渉にあたります。これらの制度に対応できない会社への弱者救済が大義名分となっていたのですが、実はプレハブ系のハウスメーカーも対応するのに消極的で、大小様々な企業が反対を唱えれば、政治の判断も時期尚早と判断して、「省エネ性能説明義務化」としてスタートしたのです。

・「省エネ性能説明義務化」は平成11年基準と同レベル

法律ではこの「省エネ性能説明義務化」は平成28年省エネ基準に達しているかどうかを説明するようになっています。しかしこの平成11年基準は、平成25年基準から平成28年基準へと断熱性能を向上させるような変更は行わずに、細部の変更でネーミングのみをバージャンアップさせてきた経緯があるのです。驚くことに、この基準が省エネ等級で最高の4として評価されていて、次世代省エネ基準と呼ばれているのです。その前の平成4年基準が新省エネ基準とネーミングされていたので、当時としては当然の「次世代・・・」というネーミングだと思いますが、あまりの性能に低さに、その後違和感を感じるまで20数年の年月が経過している辺りが、日本の住宅が省エネ後進国で低空飛行していた事を物語っています。

・法律の文面は、素晴らしいが、、、、やはり基準が問題

建築物エネルギー消費性能基準 への適合性について評価を行うとともに、当該設計の委託をした建築主に対し、当該評価の結果(当該小規模建築物が建築物 エネルギー消費性能基準に適合していない場合にあっては、当該小規模建築物のエネルギー消費性能の確保のためとるべき 措置を含む。)について、国土交通省令で定める事項を記載した書面を交付して説明しなければならない。

改正建築物省エネ法

②転機は菅総理時代の2030年に向けた温室効果ガスの削減目標への菅総理の決断

様々な評価を受けることになる、菅総理大臣、国際的な公約して、2013年度に比べて46%削減することを目指すと表明しました。46%削減は、2013年度に比べて26%削減するとした6年前に決めた現在の目標を大幅に引き上げることになるのです。46%の根拠は、あるようで無いのではないかと思いますが、すでにEUは、2030年までに1990年比で55%削減を目標とすることを決定。英国は、2030年に1990年比68%減とする目標も掲げています。アメリカも、2005年比で50〜52%削減すると約束。これまで、2025年までに26~28%削減するとしてきた目標を、2倍近くに引き上げたカタチになりましたので、国際社会の一員としてこれに追随したのです。

③これによって政策が更に見直しをされた

 ❶2025年省エネ基準適合義務化に

2022年は補助金で支援、2023年は融資制度の優遇、2024年税制の優遇とアメをぶら下げての政治的誘導です。
さすがに、今回は住宅業界も反対することができず、むしろ以前から高性能住宅に取り組んでいた方々が、YouTubeなどで日本の家づくり基準の時代遅れを提唱し、世界の大きな流れを受け入れるしか、その選択肢はありません。2021年4月から施行された省エネ基準に係る説明制度に基づき、建築士から省エネ基準に関する説明を受けた建 築主に対するアンケート調査結果によれば、建築士からの情報提供等の説明を受けて省エネ基準適合又はより省エネ性能の高い住宅を建てることにした と回答した方は24%あり、建築士からの説明が、省エネ性能の高い住宅を建てる意向への変化に影響しているのを確認する事ができますので、このようなエビデンスも義務化へ進む要因となると私は思うのです。

 ❷ZEHの標準化  

新築住宅・建築物のうち、2019年度においてZEH基準の水準の省エネ性能を満たす住宅の割合は 約14% です。この割合を増大させるために、補助要件を見直しも検討されています。

低炭素住宅や長期優良住宅認定基準をZEHレベルの引き上げるのです。そもそも、低炭素や長期とネーミングをつけられていますが、その条件要素として温熱環境は平成28年基準の等級4、少し意地悪な表現をすると平成11年、化石のような基準で、低炭素や長期を名乗っていること、私はおかしいのではないかと考えます。住宅性能表示制度においてZEHレベル以上の多段階の等級を設定することも議論されています。民間基準ですが、HEAT20 G2・G3レベルをそれぞれ等級6・等級7として設ける案です。

等級と一次エネルギー
出典:新建ハウジング

私たちが暮らす北九州は6地域に属しています。G2レベルの等級6で、平成28年基準の家よりも31%暖冷房における一次エネルギーが削減されるシミュレーションがあります。かなりランニング費用が抑えられます。

 ❸既存住宅にも省エネ改修の推進

地方公共団体との連携で耐震改修と合わせて省エネ改修を促進する対策を更に高めていこうとしています。そもそも現行建築基準法を満たしていない、昭和56年6月以前の建物は耐震基準の見直しが行われた昭和56年以降の約28年間に建築された住宅は3016万戸で,住宅全体の60.8%と,6割を超えています。

表2-8 建築の時期別住宅数-全国(平成20年)
出典:総務省統計局

この統計は少し古いので、この割合はもう少し下がっているとは思いますが、半分以上の家が、現行基準を満たしていないのです。耐震性の向上で命を守り、断熱性の向上で健康を守る。既存住宅における改修工事を推進する目的がここにあります。北九州市にも、耐震性をサポートする補助金があります。最大100万円で4/5補助私たちも何度かこの補助金を活用した事があります。

北九州市耐震改修概要
出典:北九州市

 ④これから消費者が考えておくこと

住宅及び居住環境に関して重要と思う項目として、断熱性能やエネルギー消費性能を挙げた消費者の割合は、 他の項目と比べて相対的に低い水準にとどまっているのが現状です。これはなぜでしょうか?日本人特有の我慢する文化と節約思考もあり、家は夏は暑い、冬は寒いのが当たり前と思っていて、これらの要素が大切だと気がつかない方が大半なのです。ましてやハウスメーカーさんや営業マンが積極的にアドバイスをする環境でなければ、普通にスルーする項目になるのです。

  • 住宅の省エネ化の流れは変わらない、それなら早めにその流れを把握しておくと補助金や優遇税制などのメリットがある
  • ウッドショックや半導体不足、コロナによる工場稼働停止、諸外国のインフレで、価格の上昇リスクも今後も相当にある
  • 家の基準は最低でもZEHはマスト、可能であればZEH基準を20%上回るHEAT20G2(等級6)レベル

過去の歴史から学ぶとすれば、建築基準法が変わり、旧耐震の昭和56年6月以前の建物とそれ以降の建物では、市場価格も大きく変わっている。今回の省エネ基準の強化見直しへの対応は、過去の新耐震基準適合の案件と、極めて同じような状態になる事が、将来的には想定される。「2030年基準」以降の建物かそうでない建物か。
ただし、ここで注意しておく必要があるのは、耐震性は年代(昭和56年6月以降)で明確な基準で区分けされましたが、今後はZEHやUa値などの数値基準で基準が区分けされてくるのです。だから、今こそ2030年基準の家を建てる事が重要になるのです。そして、昭和の家がなぜ、住みにくいのか?間取りもあるけど、とにかく寒い、これが一番の問題ですよね。これを今後も引きずる必要性は全く無いと考えています。

 ⑤ZEHを上回る基準の家を建てるには、外皮性能(UA値)の計算方法選択肢あり

   1標準計算ルート 

   2簡易計算ルート外皮性能計算において外皮面積等を用いない簡易な計算法

   3モデル住宅法 戸建住宅用の新たに開発された手計算可能な簡易な計算法

   4仕様ルート  仕様で判断する評価方法

北九州の家づくりにおいて、価格と性能をまじめに考えると標準計算でUA値を計算するのがマストな選択なのは言うまでもありません。

⑥省エネ性能の第3者機関の認定を取得する

BELS(=Building-Housing Energy-efficiency Labeling System)を取得する事をお勧めします。車を購入する際に、燃費を気にする人は多くいます。燃費が良い車は少ないガソリンで長距離を走る、いわば家計と環境に優しい車。その車の燃費に該当する住宅の省エネ基準、それが「BELS(ベルス)」です。BELSは5段階の星で住宅の省エネ性を評価し、星の数が多いほど家計と環境に優しいことを表します。
BELSの評価は、第三者機関であるBELS実施機関が一次エネルギー消費量をもとに、省エネルギー性能を客観的に評価をします。

⑦高断熱議論は、この政策が実行されればもうGoleが近い。残された課題は、、、気密性

断熱脳性能を表すUA値は計算によって求めることができますが、気密の性能であるC値は建築物において測定しなければいけません。決して計算で求められない数値なのです。気密の数値を求めるには、気密測定を実施するのみ、これしか選択肢はありません。そして、正式には建物が完成した段階で計測するのですが、既に完成してしまった建物を計測しても、改善が難しい場合があります。気密の数値を測定する事が目的ではありません、気密性が高い家をつくるのであれば、気密施工を終了した段階で計測します。つまり、完成までに2回計測することが極めて重要です。

ちなみに、明確な基準はありませんが高気密住宅と呼ばれる最低限の数値は1㎝2/m2程度だと言われています。北九州の価格と性能を両方まじめに考える工務店、ハゼモト建設の気密値は平均   です。

⑧太陽光発電は義務化にはならないが、限りなく標準化を目指す方向

現在の搭載率は12% 2030年には60%の設置を目指しています。ここ最近、ガソリン価格が石油価格の高騰と共に、急上昇しました。まだまだ火力発電への依存度が高い日本も電気代は上昇傾向にあります。以前はエアコンは贅沢品として捉えられていたので、家電製品として取り扱われていますが、実は空調機器として住宅設備として、建築工事に組み込むべき製品です。これと同じように、家計にも環境にも優しい太陽光発電は家を建築する際には標準仕様で設置するのが、当たり前の時代になると、個人的には確信しています。家電製品ではないですよね、太陽光発電は、、、

⑨まとめ

2030年を過ぎても標準以上の性能をキープできる家を建てる事は、健康にも家計にも、そして資産としても極めてマストな選択であると言う事を、もっと多くの方が知るべきだと思うのです。その性能は、断熱性はHEAT20 G2レベル、等級6以上。当然、価格と性能のコスパを考えて外皮計算は標準計算ルートで計算してもらうことも忘れてはいけません。建築中でしか実測できない気密測定も原則2回実施してもらう、太陽光も標準搭載ですね。

リフォームでの改修メリットを説明した資料ですが、新築住宅を建てる際もとても参考になります。

また、気候風土適応住宅における地方公共団体の取り組み状況にも注目していきたいと思います。建築物省エネ法では、通風の確保など地域の気候・風土・文化を踏まえた工夫の活用により優れた居住環境の 確保を図る伝統的構法による住まいづくりの重要性に配慮し、気候風土適応住宅については、省エネ基準を一部 合理化する措置を講じています。気候風土適応住宅の基準については、真壁造の土塗壁や落とし込み板壁等の一般的な仕様が建築物省エネ法 に基づく告示で規定されているほか、所管行政庁がその地域の自然的社会的条件の特殊性に応じて、独自基準 を定めることができることとしていて、北九州市も時期が未定ながら検討しているかも知れません。

今後、数年間で家づくりに基準は激変していきます。営業マンの言う事を鵜呑みにしないで、自分の目と耳でそれを確認して、実際の建物で体感をして、その性能が本物か偽物かを見極める眼力を身につけて頂きたいと思います。
北九州で家づくりを考える一人でも多くの方が、人間らしい快適な暮らしをコスパ良く実現できることを願っています。

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